池上矯正歯科クリニックインタビュー

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本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂きまして誠に有難うございます。

 本日は池上先生が開発されましたHybrid Orthodontic Treatment System (HOTS)という新しい矯正治療のシステムにつきまして詳細をお伺い出来ればと存じます。宜しくお願い致します。

Q.まずHOTSの名前の由来を教えて下さい。


A.HOTSはHybrid Orthodontic Treatment Systemの頭文字を取っています。
最初は私の開業地が熊本ですのでHigo (肥後) Orthodontic Treatment Systemとか、私が香港大学の客員教授をやっていて今年香港大学矯正科のスタッフとの共著でWorld Journal of Orthodentics(W.J.O)にHOTSの論文を発表する関係からHong-Kong Orthodontic Treatment Systemという名前も候補に上りましたが、結局Hybrid Orthodontic Treatment Systemに落ち着きました。


Q. HOTSという治療システムを考えられた経緯はどのようなものだったのですか?


A.HOTS は小臼歯抜歯症例に用いられる方法で

①MIS (Micro Implant Screw ), 
② Dual Dimension wire(D-D wire)( 前歯部 .017×.025 rectangular, 臼歯部 .016 roundのwire),
③MEAW (Multiloop Edgewise Arch Wire)

という3つの異なる概念のもとに開発された矯正治療のツールを組み合わせて現在考え得る最も効率的な治療法を確立しようとする試みから生み出されました。最初は7~8年前にD-D wire (商品名/WonderWire) を米国で見かけて使ってみたのがきっかけです。当時はMISがまだ一般的でなく、臼歯をアンカーとして顎内ゴムや顎間ゴムで犬歯や前歯を引くというシステムだったのですが、このwireは臼歯部がラウンドですので臼歯のコントロールが非常に難しく治療はあまりうまく行きませんでした。その後、MISが臨床に使われるようになり、私の診療室でもこれに早くから取り組みましたが、ある時これらふたつを組み合わせて使ってみた所、治療が非常にうまく行ったのです。

 そこで、「これはいける!」ということでその後当院のほとんどの小臼歯抜歯ケースにこの方法を用いて次第に改良を加え、現在あるシステムとして確立していったというのがこれまでの開発の経緯です。


Q.この治療システムの特徴とメリットについてお話しいただけませんか?


A.この治療法の最も大きな特徴は治療の第3段階(Step III)でD-D wireを用いて犬歯単独での遠心移動を行いながら同時に前歯部の舌側移動を行うところにあり、従来からある犬歯のみを先に遠心移動した後に4前歯の舌側移動を行う方法 (Separate canine and anterior teeth retraction) や6前歯をひとまとめにして舌側移動をはかる方法 (En masse retraction) とは一線を画しています。歯槽骨の解剖学的形態を考えれば6前歯をひとまとめにした牽引方法では犬歯が舌側の皮質骨に当たる方向へ牽引されるため、あまり適切とは言えず、犬歯と4前歯を分けて遠心移動するほうが犬歯を唇舌側の皮質骨間の海綿骨中を犬歯部のカーブに沿って移動させることができ、より効率的と考えられます。しかし、犬歯の遠心移動と4前歯の舌側移動を別々のタイミングでやっていたのでは非常に時間のロスが大きく、非効率的です。そこで考え出されたのが犬歯と4前歯を別個に動かしながらなおかつ同時に遠心または舌側へ牽引するというHOTSの考え方なのです。これはD-D wireとMISを組み合わせることによって初めて可能になったということが出来ます。


Q.よくわかりました。それでは次にDual Dimension wire(D-D wire)についてお聞かせください。HOTSでは何故D-D wireを使うのでしょうか?


A.先程も申しましたように私は6前歯をひとまとめにして舌側移動をはかる方法(En masse retraction)は犬歯の牽引方向が適切でないと考えています。 しかしながら、犬歯と4前歯を分けて別々のタイミングで遠心移動すると非常に時間がかかります。そこで犬歯と4前歯を分けて遠心移動する点では同じなのですがこれらを同時にやってしまうためのツールとしてこのD-D wireが非常に有効だと考えているのです。このような6本の歯の同時遠心移動には強力なアンカレッジが求められますのでそれをMISが引き受けるということなのです。また、臼歯部がラウンドであることは摩擦の大幅な減少につながり、スライディングメカニクスを応用する上で非常に有利になります。


Q.次にdiscopender 468の開発経緯についてお聞かせください。
何故HOTSの開発と同時にdiscopender 468を開発する必要があったのでしょうか?


A.HOTSを用いて前歯部を後方へ牽引する際に前歯部のトルク(傾斜)をロスさせることなく牽引するには何ミリの長さのフックが必要なのかはつい最近までよく解っていませんでした。

 一昨年の日本矯正歯科学会で、パワーアームの高さを変えて前歯を引くことにより前歯のトルク(傾斜)をコントロール出来るという長崎大学で行われたin vivoでの実験結果のポスターを見て、この3連タイプのフック(商品名/discopender 468)の開発を思いつき、バイオマテリアルズ社にその製作をお願いしたということです。


Q.先生はもう一つ、新しいCoil Springも開発されたとのことですが、これはHOTSとどういう関連があるのでしょうか?


A.この製品はSmart Coil Spring(SCS)と言いまして、この製品の開発コンセプトは、

①一定の長さ (1㎝) で一定の力 (100gまたは150g) を発揮すること(Smart という名前の由来)
②なるべくスプリング部分が短かく、結紮線を繫いで長さを調節することにより治療の全期間を通じて使えるもの(One-fits-all concept)

ということで開発に取り組みました。100gは犬歯の遠心移動に適した力で、150g (左右で合計300g) は4前歯の舌側移動に適した力なのです。 従来の製品はeyeletが両サイドにあり全長が決まっていることと、最短でも9㎜とそれ自体が長すぎた為、歯牙を牽引する際に距離に余裕のある初期のステージでしか使えませんでした。この新しい製品はすでに開発を終えていますので近日中にフォレスト・ワンから発売される予定です。


Q.最後にHOTSを使う上で先生が今後の課題として感じておられることがあれば教えて下さい。


A.今までに現在進行中のケースを含めて約200例にHOTSを応用してきましたが今後の課題と思っていることは、

① 犬歯コーナー部分でのスプリングやPower chainの歯肉への食い込み
② 犬歯を後方へ牽引する際に、MIAを植立する位置(高さ)の関係で後上方に牽引することになり、犬歯をティッピングさせると同時に圧下させながら牽引することになる点
③現在の所、HOTSが他の牽引方法に比べて優れているという意見の学問的な裏付けがない点

などです。いずれはこのことを科学的に証明したいと考えております。

Q.今後治療にHOTSを取り入れる先生方に対し、アドバイスがあればお願いします。


A.開発者ですから当たり前のことですが私自身は非常にいいシステムと思っておりますので先生方の診療に是非取り入れてみて頂ければ幸いです(笑)。この治療システムは私自身まだまだ開発途上のシステムと考えており、今後色々な先生方のアドバイスを頂きながら、更にいいものにしていければと考えておりますので、以下のアドレス宛に是非ご意見をお送り頂ければ幸いです。
tiddsms@koc.or.jp


本日は大変有難うございました。 

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池上先生のHOTSマニュアル本は
現在フォレスト・ワンより発売中です。

池上先生 略歴

1974年 九州歯科大学卒業、同年鶴見大学歯学部矯正学教室入局(助手)
1977~1979年 東京医科歯科大学小児歯科 ポストグラジュエートコース
1981~1983年 タフツ大学歯学部矯正学 ポストグラジュエートコース留学
       Certificate of specialty(米国矯正歯科専門開業資格)取得
1984年 American Board of Orthodentics(A.B.O.)取得(日本人で3人目)
1984年 熊本市にて最初の矯正歯科専門医として開業 現在に至る
1985年 タフツ大学より Master of Science (M.S.) 学位授領
2001年~ 香港大学歯学部非常勤助教授(honorary assistant professor)
2001年 日本MEAW研究会会長(会員数約350名)
2006年 日本矯正歯科学会専門医制度発足により専門医資格取得
2007年 香港大学歯学部客員教授(honorary associate professor)
2008年 長崎大学歯学部非常勤講師
2008年 日本矯正歯科学会代議員

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熊本市辛島町64番地